この季節、とくに夕刻が近づく時間帯になると外からツクツクボウシの大合唱が聞こえてきて、ああ、今年の夏も空振りだったかと、妙に愁然とした気分になる。今日はまさにそんな日だった。
「(つくつく法師、寒蝉、Meimuna opalifera )はカメムシ目(半翅目)・ヨコバイ亜目(同翅亜目)・セミ科に分類されるセミの一種。晩夏から初秋に発生するセミで、特徴的な鳴き声をもつ。オーシンツクと呼ばれることもある。」また、「北海道からトカラ列島・横当島までの日本列島、日本以外では朝鮮半島、中国、台湾まで、東アジアに広く分布する。」と書いてある。
うむ、蝉はカメムシ目だったのか。
「日本産の中では勿論、恐らく世界的に見ても最も複雑で音楽的な鳴き方をする小型~中型のセミ」との記載がある。
そうか!。世界的に最も複雑で音楽的な鳴き方をするセミが身近にいる幸運に感謝しよう。
ところで、高校入学時に買った旺文社の『国語辞典』には、その鳴き方について「オーシンツクツクと鳴く」とだけ書いてあって、ながい間これに不満だった。というか、論外だ。いやいやいや、まてまて、そうじゃないだろ。ここは虚心坦懐に聴いてみろよ。音が違うし、ちゃんと起承転結もあるだろ、と思っていた。ずっと思い続けていた。
その起承転結について、Wikipedia は、「「ジー…ツクツクツク…ボーシ!ツクツクボーシ!」と始まり、以後「ツクツクボーシ!」を十数回ほど繰り返し、「ウイヨース!」を数回、最後に「ジー…」と鳴き終わる。最初の「ボーシ!」が聞き取りやすいためか、図鑑によっては鳴き声を「オーシツクツク…」と逆に表記することもある。」と記載している。・・・えっ?
You Tubeから「ツクツクボウシの鳴き方」
『セミの図鑑』から「ソロ:広島県(2007)」
ほら、Wikipediaだって違ってる。だからWikipediaは信用するなっていつも学生に言ってるんだ。
まず最初の「ジー」からして違う。虚心坦懐に聴けば、「ジリジリ・・・」から始まってるだろ? まあ、これは些細なことだからいいだろう。しかし次はどうだ。「ツクツクツク・・・」じゃなくて、ここは明らかに濁音になってるだろ?「ヅグヅグヅグ・・・」か「ジュクジュクジュク・・・」だ。いや「ジュグジュグジュグ・・・」だと主張するむきもあるかもしれない。あっていい。ここは意見の分かれるところかもしれないが、すくなくとも「ツクツク・・・」とはいってない。断じてない。遠くからじゃわからない。近づいて聴いてみるとよくわかる。
そこから一気に佳境に入っていく。「ヅグヅグヅグヅグウォーーッシ、ヅグヅグヅグウォーッシ、・・・・」だ。虚心坦懐に聴けばそういってる。決して「ツクツクボーシ」ではない。で、これが十数回繰り返されるうちにだんだん加速していく。アッチェレランドだ。
最後だって、「ジュグーッショイ、ジュグッショー、ジュグッショー、ジリジリジリ・・・」だ。決して、「ウイヨース!」なんかでない。だいたい「ウイヨース!」って何だ。若大将が光進丸の上から手を挙げてる姿が脳裏をよぎったぞ。
という訳で、ツクツクボウシの鳴き方はこれで決まりだ。やれやれ、やっと積年の思いを吐露してすっきりした。秋の夜長、梨のおいしい季節だし、なんだかすがしがしい気分で過ごせそうだ。
どうでも良いが、
「ネコはどうして「にゃし」って言えないんだろう」by ニャロメ